松本有記クリニック開業30年を振り返って【30周年ブログ1/3】
写真:約28年前のラポルテ北館の診療室にて
お久しぶりです。松本有記です。
早いもので気が付くと、松本有記クリニックを開業して今年の2022年6月で丸30年。ついこの間、出版記念も兼ねて20周年のお祝いを多くの人に囲まれてしたのが嘘のよう…時が経つのは本当に早いな~と。
漢方専門クリニックを完全自費診療で開くこと、昔はそんなこと考えてもいませんでした。
松本有記クリニックを開く前は、某病院の外来で保険を使った漢方診療をしていました。外来はいつもとても混んでいて、待合室に患者さんがあふれる感じだったのですが、その日は何故かとても空いていました。私は当時ずーっと横についてくれていた熟練の看護婦長に、「患者さんの数が多いのでもう一コマ診療の日を増やすよう理事長と話がついた」というような報告をしていました。
人生を変えた、婦長の何気ない一言
婦長は唐突に、
「先生そんなにあくせくしないで、お茶でも出して一人ひとりゆっくり診療したらどうですか?それが本来の漢方診療でしょう」
と言い出しました。
「エーッ、そんなの無理!」
30年以上前、普通の保険診療をしている病院でお茶が出てゆっくり診察、のようなイメージは全くありませんでした。(そもそもお茶が出てくるクリニックは当時ほとんどなかったと思います)つまりそれをするには自費・自由診療ということになります。自費診療となると、駅近、小綺麗、いろんなことが頭をかすめましたが、財力もなくそんなこと考えたこともない私にとっては、
「いったい婦長は何を言っているんだろう…」
としか思えず、最初は全くピンと来ませんでした。
元々『診療といえば保険診療』しか頭になかった私は「自費診療って…?」という感じで、全く考えたこともない概念。でも不思議なことにその日の婦長は食い下がって一歩も譲りませんでした。後で考えてみると「神の声(?)」だったのか、まさに憑りつかれているようで、後にも先にもこの話をしたのはこの日だけだったのです。
婦長とずっとやりとりしている間にだんだん私もその気になって、次の日仕事が休みだったこともあり知り合いの人に声をかけてみると、なんと2件目で「ありますよ、ピッタリのところがあります。今から行くところです」と…。
お金の全くなかった私には敷金・家賃と言われても無理だし、週に1.5日だけの使用になるので採算が合いません。そんな難しい条件に当てはまり、しかも三宮と元町(神戸の中心地)から徒歩数分という駅近、しかも家賃はタダ!という好条件。結局話がとんとん拍子にまとまり、ビルの一角に“松本有記クリニック”が誕生しました。パートの人は子どもを迎えに行くために時間が来たら帰ってしまうので、最後は私一人で後片付けをしないといけないなど、何かと大変でした。幸い勤務先の病院から、クリニックをオープンしたことを貼り出していいと言ってくれたおかげで、徐々に患者さんが増えていきました。
また訪れた転機
そうしてどんどん患者さんが増えていくと、家賃をタダにしてくれたビルのオーナーさんは、私がクリニックをそこでオープンすると浄水器が売れるという思惑があったのでしょうが、結局売れなかったのでだんだん不機嫌になっていきました。「いつまでもここに居られない」と思いました。
そんな時、偶然にもJR芦屋駅前ラポルテ東館の小さなスペースに、急遽お店のキャンセルが出たという話を聞きました。1ヶ月以内のオープンに間に合わせたら家賃だけでいいから、とそれも急に話が決まりました。
神戸でオープンしてから約半年が経っていました。それからまた慌ただしく芦屋へ引越しし、幸い路面店だったので意外と新規の患者さんも来られ、忙しくなっていきました。途中まで二足のわらじを履いていましたが、これならクリニックだけでもやっていけると判断し、病院を辞め、松本有記クリニックだけの診療にしました。
(次回へ続く)
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