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死との向き合い方②「新しい世界に移るという考え方」

ドアがたくさん並んだ部屋
ドアがたくさん並んだ部屋

 

前回のブログ死との向き合い方①「あなたの肉体とエネルギー」 の続き

クリニックで診たお母様と息子さんのお話

年末に初診で85歳の女性が息子さんと一緒に来られました。

症状は「食べれない。(重湯を食べていたそうです)食べると胸の辺りが痛む。寝てても痛い・・・」以前から症状があったそうですが、この2週間位特に酷いそうです。これは食道癌もしくは何かの癌であると思いました。「すぐ検査をしてチューブで栄養を入れないと」と伝えましたが、「検査はしたくない」と、そのことは息子さんも了承されていました。

検査をせずに。ということだったので、私のできることを考え、①カプセルから出した状態の消化酵素と、②痛みをとる胃にやさしい漢方薬をまぜてお湯に溶かして飲むように、それだけでは足りないので、③がんなどの難病に効くといわれる特効薬(といっても1本5mlの液体)を1日2~3本飲むように言いました。

一度に購入せず、数日後の年末ぎりぎりに息子さんが残りを取りに来られました。

年が明けてすぐ、息子さんから連絡があり、クリニックに追加の薬を取りに来てそのままお母様の所に届けに行くと、一人で亡くなったようで、警察の方が餓死が死因だから解剖しなくてもよいという判断だったそうです。どうもクリニックに来た次の日になくなっていたようです。

私もスタッフもとてもびっくりしました。というのもご本人はとてもしっかりしていて、スタスタと歩き、そんなに瘦せている感じやカリカリした感じも無く私の質問にもテキパキと答え、頭もクリアでした。本当に普通の人に見えたので、とても翌日に亡くなられるように見えなかったのです。

お話を聞くとお母様は薬剤師で、自分で薬局で漢方を買って、ご自身で健康を管理していたけど、最初は効き目があったのに徐々に効かなくなったそうです。

高齢者と手をつなぐ

「もう少し早く来ていたら・・・」と悔やまれましたが、それも寿命だったのでしょう。病院に入院していたら、あのようなお会いした時のスッキリした状態で死を迎えることは決してなかったでしょう。

日常の延長としての死という考え方

このようなお母様の亡くなり方、日々生活をしたまま痛みはあったにしてもスーッと自然にあちらの世界へ移行する。本当にあっぱれな死に様で、理想的な死に方だと思ってしまいました。

息子さんと一緒にクリニックに来た日の帰り道、駅で別れた後お母様はいつも乗るバスに乗らずタクシーで帰ったそうです。「お袋にしてはめずらしい」と思ったと息子さん。たぶん体力的には限界だったのでしょう。そうであっても息子さんにも弱音をはかず、「しゃんとして生き抜いた」気丈な方だったのでしょう。

後日息子さんがクリニックに来て「母も最後にここで診てもらってよかったと喜んでいると思う」と言ってくださり、こちらも胸があつくなりました。

きっとあまり食べられなかったので、癌にも栄養が行かず、癌の成長がゆるやかでその分神経や血管をブロックしないため、痛みもそうひどくはならなかったのでしょう。(「通じざれば即ち痛む」という漢方の言葉があります)

直接的には癌が原因かもしれませんが、食べれなくなって老衰が早まったとも言えるでしょう。昔はこういう人が多かったのだと思います。

次回、「死ぬ時に後悔しない生き方」に続きます。


著者紹介

松本有記(まつもと ゆき)
松本 有記
(まつもと ゆき)

松本有記クリニック院長
自身が何十年にわたる体調不良に悩まされ、健康を追及していくなかで、東洋医学と出会い、オリジナルのオーダーメイド漢方薬、サプリメント、メディカルストレッチなど、全て自身が効果を実際に体感し、結果を出すことをモットーに、独自の治療スタイルを確立。生活習慣から姿勢指導、心のもち方まで幅広い角度からの診療を行っている。京都薬科大学卒業、神戸大学医学部卒業、兵庫医科大学病院(皮膚科/内科)、県立尼崎病院東洋医学科(非常勤)、尼崎永仁会病院漢方専門外来、松本有記クリニック院長
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