漢方薬に救われたけれど…その限界に気づいた
現在の日本ではほとんど行われていないのですが、
1人1人の個人に合わせて、ひとつひとつの生薬を選び抜き、配合量も考えて処方を組み立て、そうして数種類~20種類くらいをブレンドした漢方薬を、各家庭でお水を入れてぐつぐつと煮沸かして飲むというのが、本来の中医学の漢方薬処方です。(松本有記クリニックでは煎じ薬として処方しています)
こうした処方というのは、とても多くの知識と感性を要する、奥の深い世界で、ひとつひとつの生薬のもつ働きや方向性を考え、実際どんなときに、どういう人に対して、何と何をどのように組み合わせればよいか、その人の体質、今の生活環境、気候に至るまで、あらゆる角度をおさえなければなりません。
私自身、日々患者さんの治療にあたりながら、「目の前にいる人を治せないなら、それは自分の腕がわるいのだ」と必死になって、研鑽を積みました。
そして、平成4年には、勤務医をしながら、小さなところで漢方診療のクリニックをスタートさせ、平成6年に、今の形である100%自費診療(保険が効かない、完全自費負担の診療)の松本有記クリニックを開院しました。そのおかげで、保険診療の枠内では使えない、数多くの生薬も扱えるようになって、ますます漢方処方に磨きをかけ、たくさんの方々の病気を治し、健康になるための方法を指導してきました。
しかし、そうやってこだわり抜いて、個人の体質に合わせた漢方薬であっても、実は限界がある、ということに、あるときから漠然と気づきはじめたのです。
実際、私自身、漢方薬ですごく救われましたし、調子がわるかったときよりは、かなり体調もよくなりました。昔のようなひどい風邪もなくなり、最悪の状況は脱したことは間違いなくよかったのですが…。
それは、例えて言うなら、“6割方くらい”の改善でした。
元々の私の体質的に弱い部分というのは、根本的にはあまり変わらなかったのです。
何年たっても、朝は這うようにしか起きられないし、お腹もすっきりとはいかない、1日が終われば、倒れるように動けなくなってしまう…これは、ずっとでした。
「ある程度は効くんだけれど、自分も含めて、本当にはよくなっていない」と感じました。
患者さん方も、元々の体質が丈夫でしっかりされている方については、漢方薬だけでもすっかり元気になられるのですが、元々体が弱い方々というのは、たとえ漢方薬に工夫をこらしても、どこか根本的な限界があったのです。
「どうしたらもっとよくなるのだろう?」と、私はさらなる手段を探求し始めました。
著者紹介
松本有記クリニック院長
自身が何十年にわたる体調不良に悩まされ、健康を追及していくなかで、東洋医学と出会い、オリジナルのオーダーメイド漢方薬、サプリメント、メディカルストレッチなど、全て自身が効果を実際に体感し、結果を出すことをモットーに、独自の治療スタイルを確立。生活習慣から姿勢指導、心のもち方まで幅広い角度からの診療を行っている。京都薬科大学卒業、神戸大学医学部卒業、兵庫医科大学病院(皮膚科/内科)、県立尼崎病院東洋医学科(非常勤)、尼崎永仁会病院漢方専門外来、松本有記クリニック院長